2012年9月11日火曜日

『嘘ばっか』読了

嘘ばっか 新釈・世界おとぎ話 (講談社文庫)
佐野洋子作・講談社文庫

佐野洋子は怖い。
読むとぎょっとする。
発想が根本的に自分と違うと思う。

ものすごく醜いもの、
気味の悪いもの、
残酷なもの、
恐ろしいもの、
忘れていたいもの、
見なかったことにしておきたいもの、
そもそも存在していなかったと自分に思わせておきたくなるもの、
そんなものを間違って目にしてしまった時、
人は瞬間的に目をそらし、
けれどまた、恐る恐る見返してしまうのだ。
何回も。
佐野洋子の文章を読むのはそれによく似ている。



で、『嘘ばっか』。
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佐野洋子流世界おとぎ話パロディ集、26編シンデレラは継母を辟易させる度外れた野心家に。浦島太郎は若いだけの無神経な男に。嘘ばっかと言いながら、ホントと頷く、おかしくて、危険で怖い現代の寓話。
----amazonの内容説明より

…あーぁ、本の紹介文ってどうしてこう、"面白くなさそう"感全開で書かれてしまうんだろ。
確かにそういう本ではあるのだけどね。

26編、どれをとっても佐野洋子です。
「読むとぎょっとする」はこの本では抑えられているけれど、
「発想が根本的に違う」は健在です。
自分は「浦島太郎」「つるの恩がえし」「赤ずきん」が特に気に入りました。

「浦島太郎」
「あの男が持っていたものは、若さと無神経だけだったのだ。」
若さと無神経だけで生きられたらすごく楽だろうな。
何も考えず屈託なく、楽しければ楽しい、苦しければ苦しいでそれなりに生きていけそう。
だからここに出てくる浦島太郎は、ある意味とても幸せそうに見える。

「つるの恩がえし」
何といえば良いのでしょう…でも何も言わなくてもいいような気もします。少なくとも1枚目の反物は恩がえしではないし、2枚目の反物も恩がえしではありません。

「赤ずきん」
ここに出てくる男も、浦島太郎と同じく何も考えてなさそうです。そして同じく幸せそうです。女は色々あるのにね。だから男に腹は立つけれど、腹を立てるだけ無駄。憎しみは女である母に向かうのです。

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